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74年「文世光事件」外交文書公開 米に捜査圧力要請 - z

2005/02/11 (Fri) 22:14:23

74年「文世光事件」外交文書公開 米に捜査圧力要請 韓国、対日断交を検討

 【ソウル=久保田るり子】韓国政府は二十日、一九七四年八月十五日に在日韓国人が朴正煕大統領(当時)暗殺を狙った「文世光事件」をめぐり、日韓関係が最悪となった当時の外交文書を公開した。文書では、韓国側の求める積極的な捜査協力などに日本が応じなかったため、韓国が米国に日本への圧力を要請し、さらに段階的な対日断交措置を検討していたことが裏づけられた。 
 今回、公開された文書は約三千ページ。韓国では、三十年を過ぎた外交文書が原則的に公開対象となるが、盧武鉉政権の「過去史清算」政策の一環でもある。
 対日断交検討が記された文書は、韓国側の求めにもかかわらず事件の責任追及や捜査協力に応じない日本との交渉対策案として韓国外務当局が作成したもので、(1)駐日大使の召還(2)駐日大使と公使など上位職の外交官の召還-など段階的な対抗措置が検討されていた。
 また事件後、当時の金東祚外相が駐韓米国臨時大使に、訪米予定の田中角栄首相に対し米政府から日本の対応を促す“対日圧力”を要請していたことも明らかになった。韓国が同事件をめぐり対日断交を視野にいれていたことは当時から強く示唆されていたが、文書で裏付けられた形だ。
 日本政府は同年九月十九日、椎名悦三郎自民党副総裁を特使として派遣し、田中角栄首相の親書を手渡し、事件を指令した在日本朝鮮人総連合会への規制も口頭で言及することで決着させた。だが、この日本側対応にも韓国側は文書の中で、「今後の火種になるだろう」などと述べていた。
 葬儀には二百万人もの市民が参加し、「国母」とも慕われていた陸英修夫人の暗殺が、日本の旅券を所持した男が日本警察当局から盗んだ短銃で実行したことに対し、韓国政府と世論は「たとえ実行犯が朝鮮総連の指示を受けた在日韓国人であっても、日本が準備に加担したも同様だ」と、日本責任追及論一色に染まっていた。また、木村俊夫外相(当時)が「韓国には北朝鮮の脅威などない」などと発言して事態を悪化させたのも事実だった。当時の韓国国会は日本政府の「公式謝罪」や総連の強制捜査要求、日本が協力しない場合の断交などの外交措置に言及した「対日警告文」を採択していた。
     ◇
 ■当時、日本大使館一等書記官・町田貢氏に聞く
 □連日の反日デモ…国益試算し棚上げ
 【ソウル=久保田るり子】文世光事件で反日感情が高まったソウルでは日本大使館が連日の激しい反日デモに見舞われ、九月六日にはデモ隊が大使館に突入し、日の丸を引き裂かれる事態にまでなった。
 当時、在韓日本大使館に一等書記官(のちに公使)として勤務した町田貢・韓国成均館大教授(69)は、「断交まで覚悟した大使(後宮虎郎大使)から『各自は荷物をまとめておくように』といわれていた。韓国の国民感情は閔妃(一八九五年殺害)に続いて、また王妃が日本に…という感情だったと思う」と回想する。
 日本政府が韓国の責任追及や捜査協力に応じなかった背景について、町田氏は「日本社会に(独裁体制の)朴正煕政権を支援する雰囲気が全くなかった。また、社会党が強かったこともあり、朝鮮総連への捜査などは政府の視野になかった。さらに(朴政権が関与した)金大中事件(七三年)の直後でもあり、日本の警察当局の対韓感情は最悪だった」と述べる。
 今回、公開された文書では韓国外務省が五段階で断交まで至る強硬政策を検討していたことが明らかになったが、当時、ソウルで約四十日間続いたデモ攻勢の中、韓国政府の動向を探った町田氏は、複数の筋から「韓国政府が断交によって損なわれる国益を試算している」との情報を入手していたという。
 町田氏は「朴大統領は真剣に断交の覚悟だったと思う。だが、経済的打撃が極めて大きいとの報告を受け、最終的に日本への怒りを棚上げしたようだ」と推測する。
 また、「韓国は、日本が北朝鮮による対南工作の舞台となっているのだから捜査してほしいとたびたび要求していた。それが日本から受け入れられず、ついに事件が起きて、不満が一気に爆発した」と、当時の時代背景を振り返った。
     ◇
 文世光事件 1974年8月15日、在日韓国人の文世光死刑囚(当時22歳、同年12月死刑執行)がソウルで開かれた光復節(日本統治からの解放記念日)の行事で演説中だった朴正煕大統領を銃撃、暗殺しようとした事件。陸英修夫人と女子高校生が死亡した。文世光は日本人の旅券で韓国に入国し、犯行に大阪府警の交番から盗んだ短銃を使った。
 韓国側は「在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の対南工作員が文世光に大統領暗殺を命じた」として日本に捜査協力や総連の活動規制を要求したが、日本は単独犯行説をとった。田中角栄首相(当時)が葬儀に列席したが反日感情が強まり、日韓は断交の危機にひんした。椎名特使訪韓後、金鍾泌首相(当時)は特別談話で、韓国政府転覆を企てる団体・個人の取り締まりを約束した「田中親書」や、朝鮮総連の取り締まりに言及した椎名特使の口頭説明の内容を明らかにして世論の沈静化を図った。文世光は裁判で、10代から左翼運動に加わり暗殺指令を受けた経緯を供述、「朝鮮総連にだまされてやった」と述べた。(ソウル 久保田るり子)
(産経新聞) - 1月21日2時46分更新

<文世光事件>外交文書公開に寄せて 作家・梁石日さん - z

2005/02/11 (Fri) 23:23:09

<文世光事件>外交文書公開に寄せて 作家・梁石日さん

 韓国政府が20日に外交文書を公開した「文世光事件」(74年)。事件をテーマにした小説「死は炎のごとく」の作者で、自身も大阪生まれの在日韓国人である作家、梁石日さんが文書公開を受けて毎日新聞に寄稿した。
 ◇背後に大きな力感じる なぜ暗殺計画 なぜ警備突破…いまだ謎
 1974年8月15日、ソウルの国立劇場で行われた「光復節」(日本の敗戦で植民地から解放された8月15日を記念する祝日)の式典で在日韓国人2世、文世光(当時22歳)が、演説している朴正煕(パクチョンヒ)大統領を狙撃。朴大統領は無事だったが、壇上にいた陸英修(ユクヨンス)大統領夫人が頭を被弾して死亡した。文世光はその場で逮捕され、裁判にかけられて、その年の12月20日に死刑執行された。大法院(最高裁)の判決から死刑執行までの期間があまりにも早いので、さまざまな憶測を呼んだが、死人に口なしで、事件の真相は謎のまま今日に至っている。
 そして、30年後の1月20日、韓国政府は外交文書を公開した。1月20日の毎日新聞夕刊の記事と、外交文書の概要の一部(全体は3000ページに及ぶ)を読むと、朴大統領暗殺未遂事件によって、日韓両国の外交関係が齟齬(そご)をきたし、重大な危機に直面していたことがわかる。
 しかし、公開された概要の一部の文章を読む限り、文世光がなぜ朴大統領の暗殺を計画するに至ったのかという経緯はわからない。
 当時、日本の新聞、雑誌、テレビは朴大統領暗殺未遂事件を大々的に取り上げ、精力的な取材をしていた。朴大統領狙撃に使われた拳銃は、大阪市のある交番から奪取されたものだった。では、拳銃はどのようにして交番から盗まれたのか。交番から奪取された2丁の拳銃のうち1丁は、文世光の家の天井裏から発見されたが、これも不自然である。
 文世光は総連(在日本朝鮮人総連合会)の幹部と接触し、朴大統領暗殺の指令を受けていたと言われているが、これも確証はない。そして、もっとも不可解なのは、空港や国立劇場の厳重な警備をどのようにしてくぐり抜けて、拳銃を持ち込んだのか、などの点については不明なのである。
 私は2001年1月に文世光事件を下敷きにして『死は炎のごとく』という小説を毎日新聞社から刊行し、現在、『夏の炎』というタイトルで幻冬舎文庫に入っている。
 当時、韓国の民主化闘争は、朴正煕軍事独裁政権と真っ向から対立していた。その民主化闘争を在日韓国青年同盟は支持していた。
 しかし、日本での行動には限界があり、挫折してゆく。そんな中で文世光は朴大統領を暗殺することで、状況を変えようと思ったに違いないが、外交文書でも指摘されているように計画は「予期」されていたのである。
 にもかかわらず、暗殺事件は実行される。なぜか?
 その背後には、見えざる大きな力が、働いていたのではないか。その大きな力とは、端的に言えば、アメリカ、韓国の内部勢力、北朝鮮、日本の思惑に文世光は翻弄ほんろう)されたのではないか、と私は考えている。
 しかし、外交文書が公開されても、文世光事件の全容はいまだに謎なのである。3000ページに及ぶ外交文書の中に、文世光事件の真実がつまびらかになることを期待している。
 【略歴】本名・梁正雄。1936年大阪生まれ。事業に失敗して大阪を離れ、各地を転々とした後、30代半ばで上京してタクシー運転手になった。10年ほどのタクシー経験を基に書いた「タクシー狂躁曲」は、崔洋一監督の映画「月はどっちに出ている」の原作。実父との確執を描いた「血と骨」で98年の山本周五郎賞を受賞した。「血と骨」は崔監督によって映画化され、今年の毎日映画コンクールで日本映画大賞に選ばれた。
(毎日新聞) - 1月27日10時21分更新

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