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<六本木回転ドア事故>癒えない遺族の思い - z

2005/02/11 (Fri) 22:50:49

<六本木回転ドア事故>癒えない遺族の思い

 小学校入学を目前にした大阪府吹田市の溝川涼君(当時6歳)の将来を奪った六本木ヒルズ森タワーの自動回転ドア事故。業務上過失致死容疑で書類送検された「森ビル」「三和タジマ」の幹部らは、「1日に5000人が出入りするドアで、事故の件数は少ない」と軽視し、本格対策を先送りしていた。そこには若者の人気スポットを運営するおごりと商業主義を優先する企業の論理が見え隠れする。事故後、国もようやく安全基準のガイドラインを作成、企業側も対策に乗り出した。それでも「類似の事故が起きていながら、なぜ、安全策が取られなかったのか」という遺族の無念の思いは癒やせない。【長谷川豊、宮川裕章、鈴木泰広】
 両社幹部が森タワーに集まり、緊急協議を開いたのは03年12月9日。2日前に、宮城県から見学に来た6歳の女児が自動回転ドアに挟まれて、耳の後ろにけがをしていた。協議で三和側は、01年4月に、東京都渋谷区の恵比寿ガーデンプレイス内のビルで、同種の回転ドアで起きた事故後の対策について説明した。ステンレス製の柵(さく)をドア前に設置し、警備員を配置するなど順次対策を取り、同年8月以降は事故が起きていないことも説明、森タワーでの導入を打診した。
 森ビル幹部は「そんな話は初めて知った。最初からそう言え」と怒鳴ったという。しかし結局、「デザイン性が損なわれる」「まさか死亡事故は起きないだろう」などの理由で本格的対策を先送りすることで合意。ドア前にポールを設置し、シールを張って注意を呼びかける応急対策が実行されるにとどまった。そして約3カ月後、涼君は犠牲となった。
 六本木ヒルズがオープンした03年4月以前にも、回転ドアについて両社で議論があった。三和側は、ドアの床に歩行者を誘導する矢印を描きドア枠近くを通らないようにすることを進言した。しかし、提案は採用されなかった。捜査幹部は「矢印を入れると回転ドアで使わないスペースができる。客さばきに悪影響が出ると思ったのではないか」と指摘する。
 今回の事故は、自動回転ドアの安全基準がない国の無策ぶりも露呈した。国土交通省などは昨年6月、ようやくガイドラインを作成。メーカーに、(1)最大回転速度は秒速65センチ以下(2)停止後に逆回転かドア羽根を折り畳める機能を設ける――などを、ビル管理者には、(1)即応できる要員配置(2)安全マニュアルの策定――などを求めた。
 企業側の影響も大きい。同省によると昨年9月末現在、全国の大型自動回転ドア469基のうち50基が撤去され、286基が使用中止のままとなっている。三和タジマは、同型の自動回転ドアの販売中止を表明。森ビルは、管理するビルの回転ドア全96台を撤去してスライドドアに改修する工事を始めた。
 自動回転ドアと他のドアを比較実験した畑村洋太郎・工学院大教授は「製品が危険であることを前提にした対策だけでなく、より安全な製品を開発すべきだ。管理者、メーカー、利用者の安全意識が高まってこそ、涼君の供養になるのではないか」と指摘する。
 ◇「心から許せるものではない」 涼君の父
 涼君の父光一さん(40)は「この事故が刑事事件としていつ立件されるのか、ずっと気にかけていた。森ビル、三和タジマの両社が利用者の安全を第一に考え、事故の原因究明と事故防止対策を徹底しておれば、涼は死なずに済んだ。両社の担当役員に対する今回の刑事責任追及は当然のことだ。民事上の示談をしたが、望むのは息子が生きて帰ってくること。心から許せるものではない」とコメントした。
 ◇森タワーの回転ドア事故後の経緯◇
04年
3月26日 六本木ヒルズ森タワーの大型自動回転ドアに溝川涼君(6)が頭を挟まれ死亡
  29日 国土交通省と経済産業省で再発防止に向けたガイドライン作成の方針を打ち出す
  30日 警視庁捜査1課が森ビル、三和シヤッターなど7カ所を業務上過失致死容疑で家宅捜索。
     国交相が全国のビル管理者に自動回転ドアの全面使用禁止か警備員配置の強化を指示
4月1日 東京都も安全基準作成の方針を打ち出す
  8日 国がガイドライン作成に向け有識者による事故防止対策の検討会を初開催
  19日 国交省の全国調査結果で、ビル入り口などに設置された自動回転ドアに挟まれるなどした事故は、これまでに全国で270件。骨折23人を含め133人がけが
  24日 森ビルが、ヒルズ含め自社管理ビルの大型自動回転ドアをすべて撤去する方針
5月上旬 三菱地所が丸ビルやランドマークタワーなど所有ビル6棟の回転ドア19台の撤去を決定
6月8日 国交省、経産省がガイドライン原案を公表
  29日 国がガイドライン決定
8月11日 涼君の父親が初めて記者会見し、母親の手紙を公開
9月中旬 涼君の遺族と森ビルの間で賠償金約7000万円や再発防止の約束で示談が成立
10月下旬 森ビルの森稔社長から警視庁が聴取
05年
1月26日 森ビル常務、三和タジマ担当役員ら6人を業務上過失致死容疑で東京地検に書類送検
(毎日新聞) - 1月26日12時25分更新

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